先日、最寄りの警察署で免許証の更新を行ってきました。
今回も無事にゴールド免許証での更新となり、約30分の講習を受けて「平成」年号での最後の免許証を交付されました。
さてこの運転免許証の更新ですが、毎回腑に落ちないことがあります。
それは「交通安全協会の会費徴収」についてです。
免許更新の受付け時に、必ず当然のように会費を徴収されます。
「免許更新のときに会費を払ってもらっています。」
なんてことを皮切りに、
「子どもたちの交通安全のために役立っています。」
と言われれば
「そうですか。」
と払ってしまいがちです。
でも、交通安全協会に入会した覚えもないし、会費を払ったからといって何かメリットを感じたこともありません。
そこで今年も腑に落ちないまま会費を払うのは嫌なので、事前に交通安全協会について調べてから免許更新に向かうことにしました。
交通安全協会について調べてみた
先ずは交通安全協会って何者かを調べてみました。
とりあえずはウィキペディアで「交通安全協会」を検索すると、
交通安全協会(こうつうあんぜんきょうかい)とは、道路交通の安全を目的とする日本の非営利法人である。
全国組織として一般財団法人全日本交通安全協会がある。
また都道府県単位で公益財団法人、一般財団法人、一般社団法人などの交通安全協会が設置されていて、全日本交通安全協会の理事、監事、評議員の大多数を占めている。
職員の多くは、退職警察官である(天下り)。
多くの都道府県において、運転免許証の更新時講習を都道府県警から委託されており、都道府県警から支払われる委託費用が、収入の多くを占めている。
*ウィキペディア「交通安全協会」より抜粋
おおかたの予想通り「天下り」の文字が書かれていますが、収入の多くは委託費用で賄われているようでした。
交通安全協会は都道府県単位で設置されているということなので、私が住む福岡県の交通安全協会の公式サイトを調べてみました。
一般社団法人福岡県交通安全協会の公式サイトには、
福岡県交通安全協会は、交通安全思想の高揚と交通マナーの向上を図り、悲惨な交通事故をなくし、安全で住みよい交通社会の実現をめざしている団体です。
*福岡県交通安全協会:概要より
と書かれています。
具体的にどんなことをしているのかというと、下記のような活動をしています。
【交通安全広報・啓発】
- 広報誌「交通安全ふくおか」(月刊)の発行
- 広報用パンフレット、ポスター等の作成、配布
- 新聞、ラジオによる広報
どの発行物も広報活動もハッキリとした認識がありません。
簡単にいうと、目や耳にした記憶がないってことです。
【優良運転者の表彰】
- 交通安全に顕著な功労のあった個人、団体、事業所、学校を対象に幅広い表彰
これも個人を含めて知人が表彰を受けたって話を聞いたことはありません。
【交通事故の相談窓口】
- 道路交通法に基づき「交通事故相談」をお受けしております。(無料)
先日、妻が事故を起こしましたが、個人で加入している保険会社で対応してもらいました。
保険に加入していない人が利用するのでしょうか?
福岡県の平成28年度活動報告書によると、交通事故等の相談受理件数は68件となっていました。
【道路交通法の改正】
これは交通安全協会が改正された道路交通法に認知を広げるという意味でしょうか?
【安全運転管理協議会】
これが最も目にする活動内容でしょうか。
福岡県安全運転管理協議会では
- 協議会傘下の全事業所が参加して実施する年末年始の交通事故防止コンクール
- 安全運転管理に関する資器材の配布
- 事業所が実施する講習会への講師の派遣
- 安全運転中央研修所への研修者に対する助成
等の活動をしています。
地区安全運転管理協議会では、
- 安全運転競技会の開催
- 安全運転管理者の研修会の開催
- 事業所における講習会の実施
- 各季交通安全運動の実施
等の活動をしています。
どこまで役立つかは受講している人の意識次第というところもありますが、運営側としても開催しているだけで効果測定してないので必要度は判断しにくいです。
【安全運転管理者講習会】
これは一般人には、関係ありません。
自動車を5台以上(大型バスやマイクロバスは1台、普通二輪車及び大型自動二輪車は10台以上)を業務に使用している使用者向けです。
【道路使用調査受託業務】
これも工事などで道路使用している業者・企業向けの活動です。
ただし、無許可工事や不適切事案などを見つけるので、間接的に市民の安全には役立っているかと思います。
福岡県交通安全協会は驚きの入会率!
福岡県交通安全協会の公式サイトで「事業報告書」が見れるようになっています。
その内容を読んでいくと、活動内容などが書かれています。
福岡県交通安全協会の入会状況が表にまとめれています。
○入会状況
【更新:2022年10月5日】
令和2年度の事業報告が公表されていたので、福岡県(福岡・北九州・筑豊・筑後)の「免許交付数・入会数」と入会率のデータを更新します。
交付数 | 入会数 | 率 | |
令和2年度 | 847,115 | 143,473 | 16.9% |
令和1年度 | 864,876 | 155,374 | 18% |
増減 | -17,761 | -11,901 | -1.1% |
下記の平成28年度事業報告と比較しても、入会率は16.9%まで下がっています。
2018年度の事業報告書での報告は下記のデータとなっていました。
▼【平成28年度事業報告より】▼
【福岡】28年度
(更新)
・交付数:371,121人
・入会数:78,094人
・率:21.0%
(新規)
・交付数:45,075人
・入会数:13,134人
・率:29.1%
(合計)
・交付数:416,196人
・入会数:91,228人
・率:21.9%
なんと福岡県では、入会率は全体で21.9%という状況でした。
思ったよりも少ない数値だったので、ちょっとビックリしました。
少し古い情報ですが、2009年10月22日付けのJCASTニュースでは、
「交通安全協会存続の危機 会員離れどんどん進む」
10年前は8割近くだった加入者が今では、5割を落ち込む地域もある。
宮城県交通安全協会の場合、運転免許取得者(新規・更新)に占める会員数の割合を示す「加入率」は、1998年には67.5%だったのが、2003年には53.3%、2008年には37.4%と大きく落ち込んでいる。
栃木県の場合も、朝日新聞10月7日付の記事によると、1998年頃までは80%前後で推移していた「加入率」が、2005年には59.3%、2008年には49.9%だったという。
*2009年10月22日付けのJCASTニュース
という内容が掲載されています。
この記事から10年近くが経過していますが、ますます会員離れの傾向が進んでいる状況ということですね。
福岡県の交通安全協会で驚きの入会率を知ったので、他県ではどうかと思って調べてみました。
ところが、どこの都道府県でも会員数のことは情報公開されていません。
やっぱりあまり知られたくない情報なのか、事業報告書の中に会員数は開示されていないんです。
全都道府県を調べた結果、会員数が開示されていたのは福岡県以外は青森県だけでした。
【青森県】普通会員の入会等の状況
(平成28年)
・免許人口:852,501名
・会員現在数:410,914名
・入会率:48.2%
(平成27年)
・免許人口:857,004名
・会員現在数:425,318名
・入会率:48.2%
■更新者・新規免許取得者の入会率等の推移
【更新者】
(平成28年)
・入会者:87,003名
・入会率:42.2%
(平成27年)
・入会者:94,183名
・入会率:43.2%
【新規免許取得者】
(平成28年)
・入会者:3,798名
・入会率:18.9%
(平成27年)
・入会者:4,530名
・入会率:22.4%
*平成28年度事業報告より
年会費は「600円」です。
福岡県では21.9%だった入会率も、青森県では20%を切って18.9%でした。
ここまで加入率が低くなっているのは、今回調べてみて2つの要因があると思いました。
交通安全協会の入会率が減少した要因
- 免許センターや運転試験場での会費徴収方法が変わった
- インターネットの普及で、入会は任意という認知が広まった
【会費徴収方法が訴訟問題に】
会費徴収方法が問題になって、報道番組で取り上げられたりオンブズマンによる訴訟問題になったりしたようです。
そのような流れから免許センターや運転試験場では、更新申請窓口と会費徴収窓口が別になりました。
これにより会費徴収による問題が減ったと同時に、会員数も激減したということがWikipediaでも掲載されています。
しかし、私の住んでいるような地方の警察署で免許更新すると、いまだに申請と同時に費用徴収の話をされるので会費徴収は避けられないのが現状となっています。
【インターネットの普及】
最近では「交通安全協会 会費 払う?」とGOOGLEで検索すると、会費を支払わないという情報をたくさん目にすることができます。
ネット情報で「入会は任意なので断っても大丈夫」ということを知る人も多いようです。
今ではスマホ普及率も格段に向上し、誰しもが検索すれば情報にたどり着くことができます。
「別に義務じゃないし、払っていない人も多いんだから払わなくてもいいか」となるのは当然の流れでしょう。
このような状況の変化から、交通安全協会の入会者数は減少傾向にあると言えます。
エリアによって異なるかと思いますが、多くのの交通安全協会は会員数を「公表しない」のではなく「公表したくない」というのが現状でしょう。
会費を払っている人が少ないことが知られると、もっと入会者数が減ってしまいますから。
その他の交通安全協会の問題点
交通安全協会には、問題点がいくつかあるようです。
その一つが、免許更新講習の独占受注です。
免許更新講習の独占受注
多くの都道府県では随意契約という、競争入札ではない契約で免許更新講習を独占してきました。
そんな中で大阪府は橋下徹さんが知事になって以降の改革で、大阪府警が一般競争入札を行い民間企業が落札しました。
やっぱり行政のトップが強烈なリーダーシップを持って改革をしないと、天下りなどのコネクションを打破するのは難しいんですかね。
気になって福岡県警の「運転免許更新等業務委託」の入札を調べてみたのですが、一般競争入札で公示されていました。
でも、入札結果が調べてみても分からなかったので、どこが落札したかは分かりません。
入札要項に交通安全協会しか入札できないような条件を入れ込んでいるケースもあるので、一般競争入札といっても結果的に随契みたいになっている場合もありますからね。
ちなみに今年の入札内容の業務委託期間は、平成30年4月1日から平成31年3月31日まででした。
ということは、私は5月に免許更新したときは交通安全協会が対応していたので、落札業者は交通安全協会だったと思われます。
本当に競争して落札していたらいいのですが、経緯が分からないだけに何とも言えませんね。
会費の徴収方法
先ほども書きましたが、会費の徴収について毎回思うのが「払って当然」のような強制感を感じることです。
実際は交通安全協会への加入は任意なので、入会は強制でなく会費は義務でもありません。
会費の説明をするときに子供のランドセルカバーとかの写真を見せられて、「このように子どもたちの安全のために~」と言われます。
そう言われると払わざるを得ないので、今までは払ってきました。
でも、雨の日にこのランドセルカバーを使用して、通学している子はどれくらいるのでしょうか?
うちも子供は3人いますが、実際にはほとんず使うことはありませんでした。
小学6年生の子供に「ランドセルカバーって今も持ってるの?」と聞くと、「あるよ~」と言ってランドセルのポケットから出してきました。
聞くと「小1の頃に1回か2回は使ったかな~」ということで、それ以降は全く使ったことなくポケットに入れっぱなしになっているようです。
全く使っていないので、状態もキレイなままですね。
ランドセルにかぶせると、こんな感じです。
うちは小学校の通学路に面しているので、毎朝多くの子供達が通学しているのを見掛けます。
でも、雨の日にこのランドセルカバーをして歩いている子は、あまり見たことがありません。
今は安くてかわいいデザインのランドセルカバーが簡単に買えるので、もらっても使わない子が多いのかもしれませんね。
しっかりとデータを取った訳ではないのであくまでも個人の感想ですが、配布してもらわないとどうしても困るようにはとても思えません。
会員特典って目的がズレてきてるような?
会員数の激減に歯止めをかけるために、交通安全協会では会員特典のメリットをアピールしています。
でも、これって本来の目的からズレてきてるような気がします。
ホテルやレンタカーやお食事の料金を割引きしてもらえるとか、そんなことを期待している訳ではありません。
他にもチャイルドシートの無料貸出などもありますが、貸出期間が10日間~6ヶ月と地域によってバラバラです。
エリアによってはクリーニング代を実費請求するところもあるので、一概に無料とも言い切れません。
このように中途半端な特典をメリットとアピールされても、あまり魅力に感じることができません。
もちろんこれらの特典はおまけ的なものなので、本来の交通安全への貢献度とそれに対する支援という視点から考えないと本末転倒になってしまいます。
結果的に会費は払いませんでしたが
福岡県では会費が、1年間400円、ゴールド免許証の場合は5年更新なので一括払いで2,000円となります。
交通安全協会について調べれば調べるほど疑問に思うことも多く、活動内容や現状に賛同できない部分もあるので支払いをお断りしました。
しかし、受付けの女性からはかなり執拗に会費の支払いを要求されました。
「免許更新のタイミングで払ってもらってるんです。」
「1年分でもいいので、支払ってもらえませんか。」
などと、支払いが義務であるかのような口調で言われたので、「任意ですよね。」と何度か応酬して「入会しません」と言い切りました。
福岡県の免許更新では約2割の人しか入会していないので、この受付けの女性は「10人中8人」とこんなやり取りをしてるんだと思うと、それはそれで大変だと思いました。
存在自体は否定しません
交通安全協会の活動は、「子供やお年寄りへの交通指導」など交通事故減少のためになるものあります。
ただし活動に対する効果が不明瞭で、どの活動がどこまで必要かはハッキリしません。
ただし、会費の使われ方なども含めて無駄だと思えることも多く。
- ほとんど見掛けないポスターの作成・配布
- あまり使われていないランドセルカバーの贈呈
- 目的をはき違えた特典制度
など、必要性を疑問に思ってしまいます。
ランドセルカバーなどは必要な人が、個人で購入すれば事足りることだとも思います。
過去のお金に関する不正についても、各地のオンブズマンがWEBで情報を公表していたりもします。
【詐欺で告訴】名古屋市民オンブズマン
釧路交通安全協会への委託料ごまかしで住民監査請求
名古屋市民オンブズマン・タイアップグループ
昔の出来事なので今は不正なんてなくなっていることを願いますが、現実はどうなっているか分かりません。
組織を小さくすると天下り先の確保ができなくなるなんて思わずに、不要な活動は止めて必要とされる活動に注力して欲しいと思います。
とはいえ、会費を払っていない非会員になったので、「意見があるなら会費を払ってからにしろ!」と言われそうですが。