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宝島社から発刊された「貴の乱 日馬富士暴行事件の真相と日本相撲協会の「権力闘争」を読みました。
本著ではここまでマスメディアが報道してきた
【改革派=貴乃花=正義】
【保守派=八角親方を中心とした相撲協会=悪】
という図式が逆転して書かれています。
表紙に貴乃花親方の画像が使われていてタイトルも「貴の乱」となっていますが、貴乃花親方が書いたり語った訳でもありません。
なので真偽の程は何とも言えませんが、これまでとは違った視点の側面が書かれていることは読んでみて「へぇ~!」と思いました。
本の内容を信じ込むのは危険だけど、読んでみる価値はあると思ったので書評を書いてみました。
【概要】
- スクープ! 貴乃花親方と八角理事長が罵り合った「理事会議事録」120分フルバージョン
- 「裏金顧問」小林慶彦氏の知られざる来歴と背任行為のすべて
- 金庫番の元・女性職員と相撲協会の「退職金訴訟」
- ドキュメント「2・2理事選」 貴乃花「惨敗」の舞台裏
- 横綱引退騒動を描く劇画「鳥取の惨劇」
- 日馬富士暴行事件と「貴乃花文書」をめぐる水面下の暗闘
- 協会が否定する「モンゴル互助会」はあったのか
- 形骸化した「年寄名跡改革」と理事選をめぐる情報戦
中でも興味を持って読めた部分をピックアップしてみます。
貴乃花親方と八角理事長が罵り合った「理事会議事録」
なんとも生々しいやり取りが45ページ以上に渡って書かれている「理事会議事録」なんて、かなりリアルな暴露話でしたね~。
読んでいて驚いたのは、
普段は無口なイメージがある親方衆が、自分の利益のためなら一生懸命に意見を言いあっていること
です。
理路整然とは話せないけど、とにかく自分の意見を通すために必死な様子が伝わってきます。
この理事会議事録の書き起こしを読むだけで、「こりゃ~ダメだな」って気付きます。
貴乃花親方と八角親方を中心に、醜い小競り合い延々と続きます。
日馬富士暴行問題を発端とした今回の騒動のマスコミ報道では、「(善)改革派貴乃花」VS「(悪)古い体質の相撲協会」という図式が目立ちました。
ただし、この章を読むと「どっちもどっちだな~」という感じになっちゃいます。
どこまで本当かは分からないけど、やり取りがリアル過ぎてすんなり読み込むことができました。
協会が否定する「モンゴル互助会」はあったのか
危機管理委員会は日馬富士暴行問題の中間報告でモンゴル力士会は「問題なし」としたけど、やっぱりそうは思えないですよね。
八百長問題にしても昔ほど露骨じゃないにしろ、未だにあるっぽいですしね。
そうは言っても、いつの時代もガチンコ力士も数多くいるわけで。。。
それらの力士は、公には言われませんが「あの力士はガチンコだから」と一目置かれています。
大乃国や稀勢の里が大横綱の連勝をストップさせた時の盛り上がりは、単に連勝を止めただけの高揚ではないんですね。
「隆の里→稀勢の里」「貴ノ花(大関)→貴乃花→貴景勝」って感じで、ガチンコ系譜が脈々と受け継がれています。
本著によると、モンゴル人力士にもガチンコ力士はいて、その勢いによってモンゴル互助会も崩壊が始まっているという記述もありました。
確かにここ最近よく名前を耳にするモンゴル人力は、上位にとどまって横綱など上位陣相手に奮闘してますもんね。
これからますます応援したくなってしまいました。
でも思うんですけど、八百長問題についてはどこまで透明性が必要かってこともありますよね。
人情相撲ってどう思う?
「八百長はダメだけど、人情相撲は許される」ってどう思いますか?
この曖昧さが、大相撲の欠点であり魅力だったりもすると思うんですけどね~。
何もかもに透明性を求めるのも、相撲の魅力を削いでしまう気がします。
形骸化した「年寄名跡改革」と理事選をめぐる情報戦
年寄株って、まさに既得権益そのものですよね。
今の親方は高いお金を出して権利を買ったんだから、今さら協会にお召し上げって「冗談じゃないよ!」と思うでしょうしね。
だったら個人間の売買じゃなしに、お金持ちの相撲協会が買い取って管理すればいいかとも思ったんです。
そしたら協会にさらなる利権を持たせることになるだけだったので却下です。
バイキングでやくみつるさんが言ってたけど、年寄株問題ってかなり根深くて解決が難しいようです。
年寄株が取得できれば65歳までの生活は安泰だし、定年時に譲渡すればまとまったお金も手に入りますもんね。
既得権益を享受している親方たちが自分が不利になるような改革ができないのは、日本の政治とも似ていますね。
とにかく相撲界は問題山積みやね~
本著を読んで相撲界は、とにかく問題山積みだって分かりました。
- どっちに転んでもダメっぽい派閥争い
- モンゴル互助会に代表される八百長問題
- 利権争いの総本山「年寄名跡」問題
- かわいがりと呼ばれる暴行体質
誰もが自分の利益を守ろうと必死なようです。
あの貴乃花親方でさえ、相撲道と真摯に向き合う一方で自分にとって都合の悪いことは隠蔽するような記述もあります。
親方衆がそんな感じだったら現役力士にも悪い影響を与えてしまい、今の現役世代が親方になっても何も変わっていない気がします。
自分の保身や損得勘定が影響する人たちが中心となって運用する協会で、透明性を保った運用ができるわけがないですもんね。
ということで、「貴の乱」を読んで思ったことは、
身を切る改革って難しいんだな~
ってことです。
結局のところ、組織としての相撲協会は「保身的な人の比率」が異常に高いってことだと思います。
相撲協会にとって悪い人とは、この保身的な人たちであり、そこに悪党が群がる隙間があるってことですね。
そういう図式かなぁって思うんです。
この本を読むまでは「貴乃花親方」が改革してくれるって応援してたけど、そうでもないんだなだ~って知りました。
貴乃花親方自身はいいんだけど、その取り巻きに問題ありってことです。
そしてそんな人たちを取り巻きにしている貴乃花親方も、改革者としてはどうかな?ってなります。
やっぱり孫正義さんとか川淵三郎さんみたいな、自分の利益度外視&実行力のある方に改革して欲しいなって思いました。
相撲界の中の人がチョコチョコと改革したところで、もうどうにもならないところまで来てますもんね。
まとめ
協会が抱えている裁判問題や裏金問題など、本を読んで初めて知ったこともたくさんありました。
この本を読んでなかったら、一連のマスコミが報道していた「貴乃花親方=正義、相撲協会=悪」という図式だけを見ていたことになります。
この本に引っ張られるのは危険だと分かっているけど、これ読んで何が本当か分からなくなったというのが本音です。
というか、「どっちもどっち」というのが一番悲しいオチです。
親方衆が相撲協会を仕切っている限りは、誰が頭になっても問題有りだったら最悪の事態ですよね。
今回の日馬富士暴行問題を発端にした一連の相撲会の問題を、違った視点から見たい人には一読をオススメします。
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